神と悪魔の狂想曲
会議は白熱していた
3つの世界を巻き込む非常に大きな問題を解決するために、この会議は開催されていた。
そう・・・三日三晩に渡って
出席者はみな疲れ果てていた、全員目の下に隈を作り、あたかもパンダ専門の動物園のような風情だ。
しかし彼らは瞳だけは爛々と輝かせ、その語気を弱めることもなく、自らの意見を押し通そうとしていた。
極限の疲労によって次第に数を減らしてゆく発言者たち、しかし誰一人として譲歩することもなく、自らの意見が唯一無二の正解だと信じて怒号を上げ続ける。
「なぜだ・・・なぜこんなことに?」
きっかけは些細なことだった、冗談半分で言った一言にあいつが食いついてきて・・・
こんなはずではなかった、軽い談笑で済ますつもりだったのだ。
まさかこんな大事になるとは思ってもみなかった。
魔王は難しい顔をしたまま、焦りに焦っていた。
こんなことをしている場合ではない、早くアレを、アレを届けなければならないのに。和服を着て頭を抱え込んでいる彼よりも先に・・・
「むぅぅぅ」
神王は頭を抱えていた
ちょっとしたイベントのつもりだった、だからあいつの思いつきにのり、手はずを整えた。
こんな騒ぎになるとは神ですら予測しえなかっただろう・・・
なんとかしなければ、今日中に例の物を届けなければ、難しい顔で押し黙っているあいつよりも早く・・・
思い悩む二人をよそに、会議はますます白熱してゆく
時間は刻々とすぎてゆく
初老の人族の男が顔を真っ赤にして熱弁をふるっている
いわく・・・
「つまり!女性に一番似合うのは着物姿である!」
2人は同時に両手を机に叩きつけた
そしてまったく同時に声を上げた
「ばかやろう! 何を着ても似合うに決まってる!!」
「なにをいう! 何を着ても似合うにきまってる!!」
唖然とする会議場を飛び出し、2人は競い合うように走っていた
「くっ なんで「女の子にはどんな服が似合うか」なんて会議開いてしまったんだろう」
「ちぃ たまには他人の意見も取り入れた服を着せて、婿殿の視線を独り占めさせてやりたかったのに」
「ふぅ〜 あまいな神ちゃんは、今日のパーティーの主役はこの黒のドレスを着たわが愛娘に決まってるじゃないか」
「い〜や 婿殿はこっちの白い天使の仮装の方を気に入るに違いない!」
「ところでなぜそんなにいそいでるんだい?パーティーが始まるまでまだ時間はあるだろう?」
「そっちこそ、なんで走ってるんだ?らしくないぞ?」
かくして、神族と魔族、双方の王はほぼ同時に自宅近くに降り立った
隣家で開かれる「仮装パーティー」で、1秒でも長く娘に花を持たせるために
2人を待っていたのは黒山の人だかりだった
カメラやマイクをもった人だかりは、玄関前で困り果てた顔をする少女たちを取り囲み、口々に質問をしている。
「それで? 結局着物を着るんですか?」
「それともチマチョゴリ?もしかしてタキシードですか?」
そんな声も耳に届かず
2人は一心不乱に人の群れをかき分ける
「うおぉ〜〜 どけどけどけ〜〜〜」
「ただいま〜 パーティーはもう始まっちゃったかい?」
神王の愛娘は、いかにも怒っているという感じで顔を背けた
魔王の愛娘は、あわてふためいてた表情を一瞬で消し去った
2人の少女は声をそろえてこういった
「おかえりなさい、神王さま」
「おかえりなさいませ、魔王さま」
3つの世界から30人のブレーンを動員し、23人を過労で倒れさせた会議の成果は・・・
「他人の振り1週間の刑」だった